ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

カトリーナと加害者、被害者

今回の巨大ハリケーン「カトリーナ」、そして今、上陸している「台風14号」。いずれも気象災害です。

IPCC気候変動に関する政府間パネル:WHOとUNEPによってつくられた科学者の集まり)の第三次報告書では、1990年を基準とすると2100年までに1.4~5.8℃の地表平均気温が上昇すると言われています。

さらに重要なことは最近50年間の温暖化のほとんどが「人間活動に起因する」ということです。また「温暖化が進むと気候が極端化する」と言われています。集中豪雨などの洪水の頻発化、また反対に少雨による干ばつなど、両極端の現象が多発化するわけです。

また、温暖化の原因は「先進国」にあると言われています。米国は世界の25%近い二酸化炭素を排出、日本は5%など、世界人口の4分の1に該当する先進国が全体の6割の排出量を占めています。ちなみに日本の5%はアフリカ大陸全体の排出量の「1.6倍」に相当します。だから途上国の方々は「温暖化」について、先進国でまず、努力して欲しいと主張されているわけです。

温暖化においては、先進国が加害者であり、途上国の方々が被害者であるといっても過言ではないでしょう。

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さて、温暖化についてはこの程度にして、「カトリーナ」に話を戻します。

世界の25%を占める二酸化炭素を排出している米国で「カトリーナ」は大きな被害をもたらしました。マクロ的には被害者になってしまったわけです。このような段階では、かなり表現が乱暴かもしれませんがご容赦下さい。

ただ、ミクロ的に見ると、「カトリーナ」で被害に遭われた方々には、温暖化における「先進国」対「途上国」の構図が私には僅かながら見えてくるような感があります。今回の被害地は黒人の方が多くの犠牲、あるいは脱出できなかったと報道されています。これ以上は書きませんが文面から読み取っていただけると思います。

もちろん、この土地では過去から治安があまり良くなかった、洪水対策が万全でなかった、地理的な要因、初動対策の不備といった様々な背景が報道されていますが、「カトリーナ」の被災地には弱者と強者が混在していたのではないかと私は考えます。

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表現を変えてみましょう。

もし「カトリーナ」と同じ規模のハリケーンが東京を襲ったら、もしヨーロッパで襲ったら、そしてアフリカで発生したら、いくら同じ規模のハリケーンであっても被害の差、そして救助のスピードには、地域によって大きな違いが生じるでしょう。

換言すれば、今まで顕在化していなかった弱者・強者というものが「自然災害」によって、極めて顕在化、露呈するということかもしれません。「自然災害」によって初めて実感、事実として認識できるものと言えるでしょう。それも全世界の人々が共通認識できるものかもしれません。

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地球温暖化防止が先か、弱者・強者をできる限りなくすことが先か、これらを同時に議論しようというものが前回のサミットのテーマでした。

そして、今回の「カトリーナ」の被害で、先進国の指導者達は「地球温暖化対策と弱者・強者」というものは同時に議論していくべきであることを改めて実感されたと思います。いや、そう認識すべきです。

台風・ハリケーン・津波、これらの気象災害はここ一年間で大規模になっています。もう、そろそろ各国が団結し、我々、人間が引き起こした「環境問題」についてアクションを起こすべきではないかと私は考えます。

ご承知のように米国は京都議定書から離脱しました。世間では米国は温暖化防止策に消極的と認識されているようですが、「州単位」でみると日本が実施している対策をはるかに超越したガイドラインを持ち、既に実行している州があります。

私は、日本は数年前と比較すればはるかに「環境意識」は向上したと考えています。ただ残念ながら、「環境先進国」とはまったく言えない状況にあると思っています。

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今年は例年よりハリケーン発生が多いと米国では予測されています。日本でもまた台風が多発するかもしれません。そして大きな被害をもたらしていくでしょう。温暖化が進行すれば海水の温度が変動し、今まで以上に「気候の極端化」が生じます。結局、自然災害は経済にも影響を与えるのです。今回の「カトリーナ」においても経済的なダメージは相当なものがあるでしょう。

いくら科学が発達したとしても、完全に自然災害を予測することは現時点では無理です。そして、気象災害が発生し、被害者が生まれ、経済も損失していくという悪循環。残念ながら、まだこの悪循環を断ち切れていません。

悪循環を断ち切るために、そして近い将来も人類が地球に存在できるよう、できる限り、各国のリーダーは団結して早く行動して欲しいと私は考えます。もちろん個人の力も必要ですが、個々の努力では無理な段階に来ていると私は思っています。

もし「カトリーナ」が日本に来たら、と考えていただければご理解いただけると思います。また近い将来、現実にそうなるかもしれないということを。

我々ができること。それは「カトリーナ」を単純に大規模な「ハリケーン」と認識するのではなく、この被害を日本も含め、他国の指導者達がどのように捉え、どのような行動を起こすかを見守り、何の動きも無い場合は、指導者達に訴えるか、指導者を変えていく行動を起こすことなのかもしれません。