ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

順応した環境を見つめ直す第一歩として食を考える

 先ほど、私の人生の中で二番目に長く滞在し、共に苦労を重ねた青森の農家から一枚のファックスが届きました。私の過去記事である「無農薬リンゴとジュース」でもご紹介している、農薬だけではなく肥料も利用せずに栽培しているリンゴ農家「木村秋則氏」からのファックスです。私は過去記事で下記のようなことを書いています。  
実は、木村氏が無農薬リンゴ栽培に成功するまでには10年以上の年月を要されました。理由は、それまで「農薬という環境」に適応してきたリンゴの樹。彼らが、突然、農薬が無いという環境」に適応するまでに、10年もの月日が必要であったということなのです。
 ご承知のように青森県は国内最大級のりんごの産地です。そして、この木村氏の悩みである、いや、りんご栽培の最大の悩みである「フラン病」という病害を防止するため、農家の方々は私の青森滞在当時も様々な努力をされていました。特に、木村氏の場合、農薬を使用できないため、農薬以外の手法で病害を防止することが最大の課題でした。この悩みを解消すべく、木村氏と私、そして私の父が共同で開発したものが我々が特許を取得したある商品なのです。私は青森に木村氏と共に数年間、滞在し、やっと商品化にこぎつけました。  木村氏のファックスには、7月2日のNHK総合テレビの午前10時5分から約1時間程度、全国放送されるから、是非とも、見て欲しいとの内容が書かれていました。普段、何も感じずに、スーパーなどで見かける野菜や果物。また、レストランで料理人によって調理された野菜や果物、そして肉類。海外産もあれば、国内産もあります。そして、農法もそれぞれ違うでしょう。効率化を追求した農法もあれば工場で完全に栽培が可能となったキノコ類など。  しかし、いずれも我々が口に入れ、毎日、食べるものです。そしてこれらの食べ物には、生産者が必ず存在します。いくら工場で栽培されたものであろうと。木村秋則氏は、農薬で完全管理されてきたリンゴの樹に対し、農薬や肥料を使用しない独自栽培を試みられました。しかし、約9年目にして一つの実がやっと実りました。そして10年目にして、ようやく順調な栽培が確立できました。  農薬が無ければ生育できないリンゴの樹が、農薬無しで生育できるまでに10年。何気なく口にしている、しかし我々の生活や人生、健康にとって重要な食べ物。私も含め、我々は農薬を使用された食べ物を毎日のように摂り続けています。農薬を使用した食品を食べるなとは私は言いませんし、言えません。それでは毎日の食事そのものに困ってしまうことになるからです。ただ、リンゴの樹が農薬無しで生育できるまでに10年を要したということは、我々の身体も相応に順じた大きな意味での環境の変化に対応するためには、10年は必要なのかもしれないということです。  別に、食品に限りません。極論ですが、車も電気もガスもないライフスタイルに突然、なったとすれば、そのライフスタイルに順応できるまで10年以上は要するかもしれないということです。  今、私が述べたことは極論であり、現実離れしています。ただ、「少しでもこのような観点から、今回、ご紹介した、一人の農家の方の苦闘を是非ともTVを通じてご覧いただき、まずは我々の生活に欠かせない食から、環境という問題を考える第一歩」としていただければと思います。