ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

木村秋則氏最新書籍:奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録
奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録
石川 拓治(上記の太字リンク先はアマゾンのこの書籍の紹介先です)

 本日、2008年7月25日発行の「木村秋則氏」の新しい書籍を、著者である「石川拓治」様より発行所である「株式会社幻冬舎」様経由で頂戴しました。まずは心より御礼申し上げます。
 この書籍は「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」制作班の皆様の監修によるもので、「2006年12月7日に木村氏が出演された放送」では伝え切れなかった内容が、この書籍で紹介されています。

 少し、書籍紹介から視点が変わりますが、私も2006年12月7日の放送当日だけでなく、翌朝の出来事が今でも忘れられません。

 私の知り合いや関係者の多くの皆様に、「是非とも木村氏の番組を見てください」と事前にお伝えしていました。そして、放送翌日の朝、私の携帯電話にある方から、「小島社長、番組を見た感想のメールを送信できない」との連絡が。
 調べてみるとその方のメールだけでなく、まったく他のメールも受信できない状態で、サーバー運営会社に聞いてみると、我々が開設している「木村秋則氏のサイト」のアクセスが一晩で数十万人あり、そのアクセスを記録するためのログだけで、サーバーの容量を超えていたため、メールが受信できなかったことが判明。すぐに前夜からの膨大なアクセスログを削除し、その後、無事にメールを送受信することができました。いずれにせよ、それほどの反響、多くの方の共感を呼んだ番組だったということでしょう。

 さて、本日、到着した「奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家木村秋則の記録」を読ませていただきました。数年間、木村氏と共に過ごした日々の記憶が蘇ってきました。また、放送では伝え切れなかった数々のエピソードがこの書籍には網羅されています。

 木村氏と奥様、そして家族の方々の努力と決してあきらめないという信念が、今の木村氏のリンゴを産んだことは間違いありません。主人公は木村氏とそのご家族です。
 私が青森に住んでいた頃は、永年、郵便局員を勤め上げられ、既に退職された義理のお父様も木村氏と同居されていました。この義理のお父様に対して木村氏が「無農薬でリンゴ栽培をやりたい」と言われ、お父様の「やってみろ」という一言が、木村氏の実質的な挑戦の出発点と言えます。残念ながら、私が青森に滞在中に義理のお父様は亡くなられましたが、この木村氏の義理のお父様と木村氏のやりとりについて、この書籍でも克明に紹介されています。

 ただ、少しだけ付け加えさせていただきたいことがあります。多くの方々にご理解いただきたいことでもあります。

  先に書いたように、主人公は木村氏とそのご家族です。しかし、「やってみろ」という義理のお父様の一声から出発した挑戦の過程には、多くの人々の支えがありました。換言すれば、主人公だけでなく、多くの脇役が存在していたということです。

 まだまだ商品として売ることができない時期に、何も言わず、秋近くになればお金を送り続けられた方々。これらの皆様は、木村氏のリンゴを買うのでもなく、食べたいと思うわけでもなく、ただ木村氏の挑戦を支え、彼の成功を心から祈っていた方々です。
 また、何の収入も無い時期に、木村氏と高校時代の同級生だった「車販売会社の社長」は、無償に近い形で木村氏に軽トラックや乗用車を渡されていました。 この車販売会社の社長から、毎晩、「飲みに行くぞ」という連絡が私にあり、もちろん木村氏も一緒でした。私も木村氏も、何も考えずに過ごすことができる数 少ない時間の一つでした。
 そして、いつも途中で酔いつぶれた木村氏に私が水を飲ませ、奥様をお呼びし、奥様が運転する軽自動車に木村氏が乗り込むのを見届け、私もアパートに帰宅 するという繰り返しは、今でも若かりし私の良き想い出の一つです。いずれにせよ、車販売会社の社長の有形無形の協力が無ければ、木村氏は途中で挫折してい たかもしれません。ご家族以外での唯一の精神的な支えを担っていた方と言えるかもしれません。
 さらに、今は、時間的に余裕も無く、やっておられませんが、過去に木村氏は独自の栽培方法で「米」も栽培されていました。その田んぼを一緒に手伝われていた、あるご家族。このご家族も、木村氏を様々な側面から理解し、支え続けた方々です。
 他にも、今も昔も木村氏のリンゴジュースを製造してくれるジュース工場の社長。木村氏のリンゴジュースを製造するために、わざわざすべてのラインを洗浄し、木村氏のリンゴを受け入れ、ジュースへ加工されています。

 他にも、多数の脇役の方々が存在します。私も知らない脇役の方もおられることと思います。

 私は、今回、頂戴した新たな書籍について批評する立場にはありません。ただ、重複になりますが、主人公である木村秋則氏とご家族だけでなく、木村氏の想像を超えた挑戦の過程には多くの脇役の方が存在することを皆様に知っていただきたいと考えるのみです。
 もちろん、木村氏は多くの脇役の方々の存在を知っておられます。昔からのお客様にまず今年のリンゴをお渡ししたいという気持ちも私なりに知っています。

 過去の私の木村氏の「紹介記事」(こ の記事の末尾の「関連エントリ」も参照下さい)においても書きましたが、少なくとも私は木村氏のリンゴを「奇跡のリンゴ」とは名付けていません。誰かが名 付け、それが独り歩きしています。「奇跡」という一種の優劣を「リンゴ」に付加させることも奇妙な話です。奇跡とは、「誰もやっていない農法をやろう」と 考えた木村氏の発想と、それを支え続けた多くの人々の存在だと私は考えます。農法そのものが奇跡だとも私は思いません。
 ただ、「奇跡のリンゴ」のままなら、まだ良いのかもしれません。しかし、もうすぐ「幻のリンゴ」になりつつあると私は「ネット通販」を運営し、数年前には考えられなかった「抽選による木村氏のリンゴの販売」という異常事態を通じて体感しています。
 少なくとも木村氏のリンゴが、彼の挑戦のスタート地点から応援され続けた多数の皆様にも届かない「幻のリンゴ」とならないように祈るばかりです。

 彼の生き様、そして通常の人間では成し得ない努力を紹介することは重要なことです。私は、木村氏の農法を誰かが引き継ぐべきとは考えません。木村氏は無 償に近い形で、自分の経験を日本だけでなく海外でも伝道されています。これも私は否定しません。関与する立場にもありません。
 ただ、最も多忙な秋の収穫時期に、木村氏のリンゴ畑を見に行くといったツアーに参加される方々、これらを企画される方々の考え、行動だけは私は許すことができません。
 まったくリンゴの実が無い春や夏よりも真っ赤な、いわゆる「奇跡のリンゴ」が眼前に存在している秋に見学する方が形にはなるかもしれません。しかし、その時期こそ極めて多忙であり、かつ木村氏自身が、やっと成長したリンゴに感謝し最後の世話をする時期です。
 そんな時期に、ある種の「物珍しさ」を求めて、昼間のリンゴ畑見学だけでなく、夜の木村氏の懇談など、一日中、彼を束縛することで何か得るものがあるで しょうか。彼を束縛している時間に、奥様や娘さんが寝る間も惜しんで、出荷準備や発送作業をされているということを想像できない、気遣いができない人が、 いくら畑を見学し木村氏の話を聞いても何も感じ取れないと私は考えます。

 多くの方がご存知ないことですが、あえてこの場でお伝えします。
 
 今まで、木村氏のリンゴが欲しい、連絡を取りたいといった問い合わせを季節に関係なく、私の会社にて多数、頂戴しています。木村氏の地元である弘前市で さえも、個人情報の観点と考えますが、問い合わせがあった場合、私の会社を紹介されます。他にも海外を含む、多数のメディアの方々の問い合わせを私の会社 が受け付けています。そして、できる限り、木村氏の負担にならないように、できないものはできないとお伝えし、私の会社や私自身ができることは、木村氏に 連絡することなく対応させていただいております。
 しかし、残念ながら、昨年は、適切な収穫時期を逃される結果となりました。木村氏の本業はリンゴという生き物が相手である「農家」です。「農家」にとっ て致命的な結果を招いてしまったと言えます。ご存知のようにリンゴの栽培は年間を通じて行われます。真冬の剪定から、真夏の管理、そして青森特有の寒さ、 豪雪などを鑑み、収穫や出荷、倉庫での保管が必要となります。しかし、多くの方々の対応に時間を費やされることで、少しでもタイミングを失えば、リンゴが 本来持つ生命は絶たれます。私の会社や私自身が防波堤の役目を果たせなかったということです。

 これ以上は書きません。

 ただ、本当に「幻のリンゴ」にならないように今、可能な唯一の手段は、静かに木村氏を見守ることではないかと私は考えます。そして、木村氏の生き様、苦 労を書籍などで紹介する以外に、これ以上、木村氏の畑を見学したり、木村氏の名前を利用することをやめることだと私は考えます。

 昨今の多様な依頼、講演、そして畑の見学などで、木村氏は「リンゴ農家」という本業を続けることが、ほぼ不可能な状態にあることを、何卒、ご理解いただきますよう心よりお願い申し上げます。

 サン・アクト株式会社 代表取締役 小島愛一郎

【追記:2008年8月29日】

木村氏の生き様を描いた絵本もできました。ご参考下さい。

りんごのおじさん (おはなしのほん)
りんごのおじさん (おはなしのほん)
竹下 文子,鈴木 まもる

【追記:2009年5月12日】

木村氏の最新書籍です。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 46)
リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ) (日経プレミアシリーズ 46)
木村 秋則

【関連エントリ】
2006年11月17日:
木村秋則氏の「NHK プロフェッショナル 仕事の流儀」出演に思う
2006年12月6日:
自然栽培農家:木村秋則氏との出会い、そして今、思うこと
2007年12月21日:
木村秋則氏「フジ」抽選応募受付終了のお知らせと最後のお願い

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