ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

散り方次第で花は二度、咲く:会社を潰しても再起は可能

flower

 私の前職はホテルマンだ。そのホテルの常務が私の父だった。

 20年近く前に、ホテルの関連会社に属していた私。そして、約15年前にホテルは会社更生法を申請して事実上の倒産となった。
 会社更生法申請当初、父は先頭に立って債権者各位に土下座を続けた。法律上、お金を債権者に渡すことはできず、ただただ、謝るしかない。罵声を浴びせられても、「申し訳ありませんでした」と、何十回も、何百回も、土下座をするしか方法は無かった。

 もちろん、他の役員も謝ってはいたが、先頭に立って、文字通り、矢面に立って、土下座を1年近く続けたのは私の父だった。実家も半分は売却し会社へ。車も軽自動車になった。

 少し視点を変える。

真面目に経営に取り組んだ結果、会社を潰すことは経営者にとって恥ではない: やまもといちろうBLOG(ブログ)

 私はこの記事に極めて、共感を覚える。私が思うに、会社が潰れかけようと感じた際は、まず経営者の給与カット、小さなオフィスへ移動、早めに金融機関に相談が不可欠。

 紹介した記事には、こう書かれている。

会社が潰れるというのは、ある意味当たり前なんですよ。

だから、潰れたときのことを、みんな見ています。会社の資金繰りが悪いのに高い遊興費を使っていないかとか、派手なオフィスにいるかとか、事前に資金状態が苦しいなどの情報を出してきて協力を要請してきていたかとか、潰れそうだと言うとき連絡が取れないとか、そういう話。

再チャレンジできる社会を! という掛け声はもちろんその通りだと思うんですが、チャレンジを容認するかはどう潰したか次第です。
 
 私も、そう思う。

 お陰様で私が属していたホテルの関連会社は連鎖倒産を免れた。ただ、取引先は皆無であり、何をやれば良いかも分からなかった。

 結局、ホテル業以外の「貴重な衰退樹木の回復」という全く違う分野の事業を開始した。しかし、2年間、給料無しで、無料で樹木を回復させた。相手は何と言っても樹木であり、目に見えるような回復には最低でも一年は要する。そのために無料で実績づくりばかりしていた。
 そして2年間、父・弟を中心に、お陰様で実績を上げることができた。しかし、実績を写真で掲載し、貴重な樹木を保有している寺院や神社に行っても、そう簡単に発注いただくことは無かった。

 しかし、救いの手が現れた。破綻したホテルの債権者のお一人だ。土下座を続ける私の父を見続けていた、あるお寺の債権者の方だ。

 「ちょっと境内の庭園を管理してもらえないだろうか」と父に電話があった。

 その方が、新たに事業を開始した際、最初にお金を頂戴したお客様。

 お陰様で、その債権者の方の紹介で、少しずつ、お客様が増え、今年で12年目を迎える。

 最初にお金を頂戴した債権者だったお客様の庭園の管理は、今も続いている。正月に、毎年、父は挨拶に行く。そして私が庭園を管理する際に、お客様は、私を経営者として「良く頑張っているね」や、「良く続いているね」と短いながらも勇気を与えていただく言葉を頂戴する。お客様は、今、私を「見続けておられる」ということだ。

 父の土下座が無ければ、今の会社も、今の私も無かった。

 父の土下座、そして、それを見続けていた債権者であり、今はお客様である、あるお寺のご住職。

 今、京都では桜の花が散っている。しかし、翌年には、また花が咲く。

 人生も会社経営も同じだ。散ることがあっても、散り方次第で花は必ず咲く。

※「ベンチャー 企業社長ブログトップ10位へ