ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

京都人による大阪人以外の全国民向けの大阪弁講座

大阪人は目が勝負

(目の表情で大阪人の心を読み取る必要がある)

 言葉というものは難しいものだ。私は生粋の京都人だが、多くの方がイメージされている「おいでやす(いらっしゃいませ)」といった言葉は使わない。また、大学卒業まで京都で住み、その後、米国に留学し英語を話し、中国語を学んだ。そして帰国後、横浜・東京、そして青森とそれなりの言語圏で生活した。

 ちなみに青森の津軽弁は英語よりも難しいことだけは断言できる。そして、東京出張の際は、あえて電車内でも社員と関西弁で会話する。若干の車内の視線を感じるがそれを心地好く感じるのは関西人だけだろう。そして最も心地好く感じるのが大阪人だ。

 さて、大阪に出張に行く方、遊びに行く方、それぞれ多数、おられるだろう。そんな皆様のご参考になればと京都人による大阪弁講座を書こうと考えているが、他府県の言葉同様、大阪弁も極めて奥が深く、使用にはくれぐれもご注意いただきたい。

 特に大阪人だけでなく関西人はいわゆる標準語へのアレルギーが強く、中途半端に大阪弁を話すと、「お前、なに、ぼけとんねん(あなたは、私に喧嘩を売っているのですか)」とすぐさま突っ込まれること間違いないため、是非とも慎重になっていただきたい。

 このエントリを書こうと考えた背景は、昨晩、「カミングアウトバラエティ 秘密のケンミンSHOW」というTV番組のコーナーの一つに「大阪弁」について紹介する場面があったことだ。この番組は日本の各都道府県の他府県民にとっては意外なネタを紹介する番組。

 番組のサイトには以下のように紹介されている。

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大阪府民と正しく付き合う方法】

知って得する怒り言葉編

大阪府民にとって「どつく」とは、手をグーにして殴ること。「どつく」と「しばく」では、「どつく」のほうがやや怒っているときに使うらしい。ただし、様々なニュアンスで使っているので、使いこなすには現地に行って肌で学ぶしかない…。

 番組では「しばく」・「どつく」・「いてまう」という3種類の怒り言葉を紹介していたが、番組の一部に過ぎず、京都人である私には物足りない内容であり、全国の皆様にも説明が不十分だったと考える。

 そこで、このエントリでは、生粋の京都人である私が全国の皆様に対し、大阪弁での怒り言葉について少し深くご説明しよう。先にも書いたが大阪弁について、使用上の注意を良くお読みになり、正しくお使いいただきたい。

 本題に入る前に、英会話でも微妙なニュアンスがあることを書いてみる。

(私は米国に留学していたため、その経験をもとに以下に示すが、間違っている場合、受験英語と違う場合は、それぞれご容赦を。)

 例えば、「Let's go!」と「Shall we go?」は似て非なるもの。前者は「行くぞ!」という意味合いで、相手が行くことについて既に概ね合意していることが前提となる。ちなみに大阪弁では「行くで」と表現する。後者は「行きませんか?」と少し身構えた提案型。大阪弁では「行きまへんか?」となる。映画で有名な「Shall we dance?」も「(もしよろしければ)踊りましょうか?」というニュアンスが含まれている。

 では、コーヒーを頼む場合はどうだろうか。

 最も簡素と思われる表現は「Coffee, please.」と頼み、コーヒーが到着すると「Thanks.」と応答する。日本では「コーヒー」と愛想無くオーダーし、「ありがと」と素っ気無く応えるような感じだ。

 これが、高級ホテルなどで頼む場合、私は以下のような表現を使っていた。基本的にはコーヒーを頼むという目的に違いは無いが丁寧さ、謙遜さがニュアンスとして隠されている。

 I was wondering if you could give me a cup of coffee.

 直訳ではないが、「もしよろしければコーヒーを頂戴したいなと考えているのですが」といった感じになる。ちなみにこれを大阪弁では「ほんまにすんまへんけど、コーヒー一杯、もらえまへんやろか、すんまへん」といった具合になる(はずだ)。

 いずれにせよ、謙虚に何か頼みごとをする際には、「I was wondering if you could・・」という表現はcouldの次に動詞をつければ何にでも応用が可能だ。店員さんなどの態度も豹変する可能性は大きいとは言えないが、少なくとも丁寧な言葉を話す人と理解してもらえる。

 では、英語の表現についてもっと書きたいことが多々あるがきりがないため、早速、本題の「大阪弁の怒り言葉講座」をご紹介しよう。

 先に述べたように番組では大阪弁の「しばく」・「どつく」・「いてまう」を怒り言葉として紹介していた。基本的に大阪以外の関西人はこれらの言葉をあまり使わない。

 まずは、「しばく」。

 「しばく」とは基本的には「叩く」という意味。「お前、しばくぞ」とは「頭を叩くよ」=「何をバカなことを言っているんだ」といった意味となる。しかし、私の学生時代には「茶、しばきにいこか」と良く表現していた。「コーヒーでも飲みにいこうか」という意味で、まったくそこには怒りの表現は無い。

 よって、広義の意味として「しばく」は英語での「do」、いわゆる何らかの行動を現すといっても良いかもしれない。ただ、基本的には、「そんなことしては駄目だよ」という思いが背景にある場合に、「しばく」は使われる。「あんた、そんなことしてたら、しばかれるで」(あなた、そんなバカなことをしていたら誰かに怒られるよ)といった感じだ。いずれにせよ、先にも書いたように少なくとも社会人になった京都人が同僚に「しばく」といった言葉を使うことは滅多に無い。ましてや、目上の人やビジネスで京都人同士であったとしても「しばく」語法は使わない。大阪ならではと考えるべきだ。

 次は、「どつく」。

 これは「殴る」という意味。「お前、どついたろか」とは「殴るぞ」=「君は殴られたいのか?」=「殴りたくなるほど少々、度を超えた何かをした」といった伏線がある。ちなみに生粋の京都人である私は、生まれてから今まで一度も「どつく」語法を使ったことが無い。こちらも大阪ならではである。

(京都にもお住まいされている「怖い世界」の方々は日常会話として話されているかもしれないが例外と考えて欲しい。)

 最後は、「いてまう」。

 これは「殺す」という意味に近い。「お前、いてまうで」は「お前、半殺しにするぞ」=「半殺しになっても良いのか」=「極めて、殺意の念を抱かさせるほど酷いことを相手にした」という流れとなる。こちらも「どつく」と同様に、私は一度も使ったことが無い。少なくとも「いてまう」語法は京都には馴染まないともいえるだろう。

 さて、まとめてみる。

 漫才などで「しばいたろか」・「どついたろか」・「お前、いてもうたろか」といった表現を耳にされた方も多いだろう。しかしあくまで漫才と言う「笑いの場」での話と考えて欲しい。

 例えば、ある大阪人がおもしろくない冗談を言ったり、ちょっとした失敗をしたとしよう。その場合、イントネーションを変えて、「しばいたろか」あるいは「しばくで」と軽く言う。しかし目は基本的に笑っている。「どついたろか」・「どつくで」も目が笑っている場合は、「やめなさい」という広義の意味として理解すればいい。

 ただ、注意すべきは「いてまう」語法だ。この語法には目に笑いが無いと基本的に考えた方が無難だ。最後の怒りのとどめの一言と理解して欲しい。

 結局、どこでも同じだが、「空気を読むことができるかどうか」が大きく左右する。相手の雰囲気が怒りに満ちていた場合、「しばく」・「どつく」・「いてまう」語法いずれも「怒り」を表現しており、窮地に立たされる一線を超えたことを意味する。逆に雰囲気が悪くなければ、「いてまう」以外は、「しばくで・しばくぞ」、「どつくで、どつくぞ」と言われた場合、単純に大阪人以外は、謝れば終わりとなる(この状況の場合、大阪人は、さらに冗談を続けて言わなければならないかどうかを瞬時に察しなければならないこともあり、大阪人以外には非常に使い分けは難しく、他府県民には無理と理解したほうが無難だ)。

 いずれにせよ、大阪人は、大阪人相手にこれらの語法を適用する。この点が極めて重要であり、他府県の人々にとってはありがたいことだ。他府県人と大阪人が予め分かっていれば、これらの語法を適用することはまず無い。

 ただ、何かの拍子にこれらの語法を「外見上は普通の大阪人」から言われた場合は、頭を下げれば事は足りる。

 問題は、「外見上、怖そうな関西在住の方」からこれらの語法で話しかけられた時、あるいはそういった場面に遭遇した際だ。この場合、他府県の人間が可能な手段は一つしかない。そう、「その場から走って逃げる」ということ。幸か不幸かこれしか方法は無い。

 結局、大阪の語法は京都人だけでなく関西人にとっても難しい。ただ、会話・語句・イントネーションなど関係無しに、「外見・雰囲気」が怖そうな人の場合、どんな口調であっても、走って逃げることが得策と言える(逃げられただけでも良しと考えて欲しい)。

 残念ながら、そして極めて留意すべき点だが、これは大阪だけでなく「関西圏すべて」に該当することであり、関西圏への出張や観光を予定されているは、是非とも注意していただきたい。

 「外見・雰囲気」が怖そうな関西圏の方を見かければ、即座にその場を立ち去ることが無難だ。下手に言い返すと、本当に「いてまわれてしまう」可能性がある。怖そうな方に「いてもうたろか」(殺してやろうか)と言われた場合、まだ「いや、結構です。勘弁してください」と逃げる余地がある。しかし、「いてまえ!」(殺してしまえ)と言われた際は、まったくの余地が無い。ただ、怖い方々も「いてまえ!」という表現は、それこそ抗争相手に乗り込む際の身内や部下への最後の指示・言葉である。一般人に対してはまず使わないと考えていい。

 以上、観光・出張の際に、大阪で「いてまわれる(殺される)」ことのないようご用心願いたくここまで書いてきたが、どうも大阪弁講座ではなく、関西圏から無事、観光・出張で生き延びるための講座のようになってしまった。ご容赦を。

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