ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

「あるある」的捏造に私も加担しかけたかもしれないという話

テレビ局からの電話  花粉症が本格化する昨年の春先前にあるテレビ局の関係者から私宛に電話が。私の過去のエントリである「花粉症でお悩みの方へ」を検索か何かで見つけられ、エントリで書いていることを「生放送の電話取材で喋って欲しい」旨の依頼があったわけです。  過去のエントリで「花粉症克服法」として下記のように私は書いています。
弘前市に滞在していた頃、サクラやリンゴといったバラ科の樹木に利用する資材の開発と販売に関わっていました。それまで、花粉症というものを経験したことの無い私も、5月のゴールデンウィークに、一斉に花粉が飛び交う町の中で、その発生源であるサクラ並木やリンゴ畑に突入し仕事をしていました。これが原因で花粉症になってしまいました。 しかし、いくら花粉症でも仕事はリンゴ畑といった大自然の真っ只中です。逃げるわけにはいきません。また、農家の方と畑でお話する時に、「いや、花粉症で困っているんです」と言えば、「何を言っているんだ、それじゃ、仕事にならないだろう。」との嘲笑に似たお言葉を頂戴しました。 そこで私は決心しました。簡単な話です。花粉に飛び込みました。くしゃみや鼻水に苦しみながらも、リンゴ畑に毎日、通い続けました。そうすると、知らない間に症状が出なくなりました。耐性がついたのかもしれません。
 要するに私の花粉症克服法は、仕事上、花粉症のままでは、かなりの支障があるため、何とか治らないかと考えた結果、「花粉に飛び込んだ」・「毎日、花粉のど真ん中に通い続けた」わけです。その結果、「花粉症が克服できた(かもしれない)」と書いたわけです。 しかし、放送されず  結局、生放送は実現しませんでした。このやりとりも過去のエントリ「ホリエモンに被害を受けた私」に詳細を記しています。以下、過去のエントリのテレビ局とのやりとりの抜粋です。
小島愛一郎と申しますが、お電話頂戴しましたでしょうか?」 「はじめまして。いや実はブログのことで。」 「はい、何でしょうか?」 「いや、実は花粉症のことで、少々お伺いしたいことがありまして。」 「はぁ、花粉症ですか?」 「小島さんのブログに花粉症のことが書かれていたと思うんですけど。」 「あぁ、はいはい、少し前に書きましたが、それが何か?」 「実は、番組で花粉症特集をするのですが、小島さんの花粉症克服談を番組で取り上げたいと思いまして。」 「それは、いつ頃の番組ですか?」 「ちょっと急ですが今度の日曜日です。」 (中略) いわゆる放送日前日に私の自宅に電話が。 「はい、小島でございます。」 「小島さん、過日に生電話放送を依頼したものですが。」 「あぁ、どうもお世話になります。」 「いや、実は、放送できなくなりまして。」 「といいますのは?」 「ホリエモン氏の話題で急転換しまして。花粉症の話題まで放送できなくなりました。」 「う~ん。了解です。先週は急展開しましたからね。」 「えぇ、そうなんです。また何かありましたらお願いしたいと思います。」 「はい、わかりました。では。」
「あるある」とは少し違ったのかもしれない  「過去のエントリ」で書いていますが、生電話放送の番組は「新しく再スタートするTV局一押しの新番組で誰もが知っている司会者」によるもの。スタッフ一同、それなりに張り切っておられたのでしょう。そして、私のような科学的な根拠もまったくない「花粉症克服法」を単にブログの記事を見て「おもしろいから採用」という流れになったと推察しています。  ただ、過去のエントリや上記のやりとりには書いていませんが、生放送できない理由の一つとしてスタッフはあることを私に言われました。 「お医者様に小島さんの花粉症克服法を紹介していいか相談したのですが、極めて危険な方法で、やはり紹介すべきでないと判断したのも放送できない理由です」と。  新番組で時間が無い、何でも面白ければ放送しようというテレビ局のスタッフの方も、実は私の「花粉症克服法」を医者という専門家のフィルターを通して意見を聞き、放送すべきかどうかの判断されていたということです。換言すれば、何でもかんでも面白ければ「科学的根拠が無くても放送する」というスタンスをとっていなかったということ。  ただ、もし私がこの分野に近い専門家・科学者で、論文なりを発表していた場合、私の極端な「花粉症克服法」も放送されていたかもしれません。なぜなら私自身がフィルターの役割をしていることになるからです。これは非常に危険な点であり、着目すべき視点だと私は考えます。 取材される側にも意識を高める必要がある  私や私の会社も過去に何度かテレビに出ています。特に春先のサクラのシーズン前になると某国営放送様は、いつも電話をかけてこられます。何か今年、放送できる話題はないかとの相談です。我々にとっても非常にありがたい話です。  過去にも3月初旬に某国営放送様でテレビ出演しました。そして3週間ほど経った後に、他の支局様から「3日後にサクラについて放送したいが何か話題が無いか」との打診がありました。「3週間前に御社の番組に出演しましたが」と応えると、「あぁ、それではあまりにも新鮮さが無いですね」との回答で、話は終わりました。  いずれにせよ、某国営放送様だけでなく、他の局でも大抵の場合、「2、3日以内に放送したいので何とかならないか」という内容が大半を占めます。業界では当たり前のことかもしれませんが、我々の取材の場合、野外での撮影ばかりで、雨が降ると撮影そのものは可能かもしれませんが、我々の仕事の本来の姿を紹介できません。我々の仕事は基本的に雨の中ではできないからです。しかし、天気に関係なく、依頼は来ます。ただ、雨の中で我々が仕事をするということは「偽装仕事」をしていることになりかねません。  メディアを批判する立場に私はありません。またメディアの方に「時間が無い」ということもある程度は理解しています。ただ、私のように何度か新聞、雑誌、テレビといったメディアに取材を受けた人間は、ある程度、「メディアに対する接し方」というものを心得ています。換言すれば初めてメディアから取材を受ける方は、結果が予想に反したものになる可能性が高い場合もあり、時にはその乖離に驚き、時には落胆してしまうこともあるということです。  新聞・雑誌については、最終的な記事にする前に内容確認のため原稿を見せていただく場合もあります。この確認はあくまで専門的な内容が間違っていないかという点でのメディア側からの依頼です。しかし、ある新聞はどんな内容であっても絶対に事前確認をさせていただけません。そして事前確認できなかった記事は、あまりにも事実誤認の内容であったため、会社・株主様全体で抗議したこともあります。  すべての記事について取材先に内容確認を取っていたら新聞は成り立たないことは事実です。ましてやテレビの場合、我々のような長くて15分程度の放送に事前に内容の確認などさせてもらえる立場にもありません。そして多くの場合、収録後の当日中に番組は放送されます。  いずれにせよ、毎日が「時間との戦い」であるメディアの方々にとっては、どこかで何らかの「ひずみ」が生じてもおかしくないことは確かであると共に「ひずみ」が生じて当然だと私は考えます。よって取材側でなく「取材をされる側・受ける側がメディアの方々という相手の状況・癖を十分に把握し、それなりの接し方で対処することが必要だ」と私は考えます。  極論かもしれませんが、「接し方」を知っていれば、「捏造問題」も最低限に抑えられたのではと私は考えます。時間が無いと言われても、その分野の専門家であれば、自分の言葉がテレビという広く世間に伝わる場合、事前に放送内容の確認したいと主張をされれば良いわけです。「報道の自由」、「編集は時間的に難しい」と言われても、専門家として内容が間違っている可能性が無いか確認したいと、これからはさらに主張すべきだと私は考えます。  よって、数は少ないですが何度かメディアに取材を受けた経験を持つ私としては、「捏造問題」やこれに類似した問題は、「取材する側」・「取材される側」双方に問題・原因があり、「取材した側」ばかりを責める風潮は少しおかしいと私は考えます。 「私も参加している起業家ブログをクリック下さい