ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

楽しくやってこそ楽になる

楽をすることと楽しむことは違う  「楽(らく)をするな」・「楽して結果が出るものか」という表現はよく使われます。もちろん、楽して結果が出るはずはありません。しかし、「仕事を毎日、楽しんでいれば、いつかは自ずと楽になる」ということは誰しも否定できないと私は考えます。換言すれば、毎日の仕事や暮らしが苦しいと思い続けていれば、いつになっても苦しいままで、逆に仕事や生活が楽しければ、結果として楽になるということです。  今回、紹介する書籍は、「ちょっとアホ!」になったことでどん底にあった会社を急成長させた社長の物語です。著者の出路氏は、立ち上げ当初は順風満帆だった事業が、ちょっとしたきっかけで、借金が返済できなくなるに近い絶体絶命の状況、そしてストレスから胃潰瘍で入院寸前にまで陥るほどの「どん底」を経験されました。 ちょっとアホ!理論 倒産寸前だったのに超V字回復できちゃった! ちょっとアホ!理論 倒産寸前だったのに超V字回復できちゃった! 出路 雅明  しかし、ある日、突然、「開き直る」ことに気付かれました。いや、気付くというよりも、ここまでどん底に至れば、下は無いから「開き直るしかない」という状況だったのでしょう。そして開き直った瞬間、見出したもの。それが「どうせやるんだったら楽しくやろう!」というスピリットでした。これを著者は「ちょっとアホ!」になることと位置づけられています。「やるからには楽しくやろう、そのためにはちょっとアホなことをしてみなければ続かない」とも言えます。 差別化戦略なんて構築しなくてもいい  少し視点を変えます。  私はMBAを取得しています。経営学全般を学びましたが、もちろん「差別化」たるものや「差別化のための戦略」といった点についても学んでいます。ただ、書籍による情報やケーススタディ(事例研究)といった机上の理論だけで、競合製品やサービスとの差別化を実現することは極めて困難であり当然のことです。  競合他社では提供できないサービスや商品を構築することといった「独自性」を付加することは「差別化」の一つです。「高級路線」・「低価格戦略」など様々なアプローチが考えられます。ただ、自らが「差別化できている」と考えたとしても「お客様がこれはちょっと違うな」と思われなければ、何の結果も効果も生まれません。もちろん「差別化」に成功しているはずもありません。  この差別化について、著者の出路氏も、過去には独自ブランド・独自商品・高級ブランド・接客の向上など様々な角度から「差別化」を図られたそうです。しかし「ちょっとアホ!」に目覚められた出路氏は、パラダイムを180度変えられました。それは、もちろん「開き直り」から始まります。
別にオリジナリティなんて、どうでもいい。 いくらオリジナリティがあってもお客さんに買ってもらわなきゃ意味が無い。 お客さんが喜んで買ってもらえるものなら何でもいい。 それじゃぁ、お客さんを喜ばせれば、それで十分満足じゃないか。 結果として、我々も売上も上がるし楽しいに決まっている。 そう、結論は、目の前のお客さんを楽しんでもらえばいいということだ。
 このような流れになります。「開き直り」と表現すれば語弊があるかもしれませんが、「目の前のお客さんが喜んで、そして買ってもらって、売上が上がれば、差別化なんて考えなくてもいいという結論」に達するわけです。換言すれば「オリジナリティや高級感を売りにしている店は多数あった」が、「お客さんが喜ぶだけでなく、社員も喜ぶような店は業界には無かったという、この「アプローチそのものが業界になかった=自然と差別化に繋がった」わけです。  しかし、そう簡単にお客さんを喜ばせることはできません。そこで「ジャージを上下で着用し来店されたお客様には全商品20%オフ」、「ブルマを着用して来店された勇気あるお客様には全商品50%オフ」といった「体育祭」の日、店内の特設ステージで演奏してくれたお客様には20%オフといった「文化祭」の日など列挙できないほどの様々な仕掛けを実行されています。  そして、最も重要な点。それは「お客様だけでなく、社員もやっていて楽しい」ということです。経営コンサルタントといった分野の方々は、これは「差別化の範疇ではない」と指摘されるかもしれません。ただ私自身はこれらの仕掛けや試みは正に差別化であるだけでなく、お客様と社員双方が楽しいという素晴らしい循環に寄与しているのではと考えます。  これらの循環が、上述した、「仕事を毎日、楽しんでいれば、楽になる」ということに繋がります。再度になりますが「お客様、社員双方が楽しくなければ、結果は生まれない」わけです。    その反対の循環が、「巨人戦」9連敗中-時代変化を読めない読売」というエントリで大西さんが次のように論じられていることに繋がるのではと私は考えます。
時代の変化を読めず、時代に合わなくなってしまったパラダイムから脱却できずに、まるで恐竜が滅びるように衰退していきます。そこにあるのは、根本的な変革を恐れ、正しく努力すればなんとかなるという宗教というか楽観主義です。
 大西さんがご指摘のように、時代の変化や流れを読むだけでなく、その流れに沿った脱却・変化への試み、換言すれば既に強固に根付いてしまっている企業風土や価値観といったものを変えていくことは一種の挑戦であり、挑戦がもたらす失敗を恐れるあまり、結局、現状維持のまま、何も変わらず衰退していくという悪循環が生まれてしまうのです。  プロのスポーツ選手で成功している方々は、決して毎日、楽に過ごされているはずがありません。毎日、努力し、結果が生まれて初めて「楽しむ・楽になる」ということを自然に体感されているのかもしれません。逆に、いくら努力しても負け続けてしまえば、苦しい思いばかりが続き、極論かもしれませんが結果として自らがやっているスポーツそのものを続けることに苦しみを感じてしまう、自らを否定してしまう、という悪循環が生じる可能性もあります。「何事も楽しくなければ、楽しい結果が無ければ続くはずがない」のです。この点は経営にも確実に繋がると私は考えます。 「アホ」と思われることを恥じない  関西人だけだと思いますが、「お前、アホやなぁ」という表現は、時には尊敬の表現に値する時があります。私も生粋の関西人ですが、子供の頃は、「アホやなぁ」と言われることばかりをして、楽しんでいました。  逆に「あいつはええ格好しいや(あいつは格好ばかりを気にしている)」という一言は関西人にとっては表現が適切ではないかも知れませんが「死を宣告された」も同然のことなのです。  ただ、人間は成長するにつれ、外見や誰もがやっている同じことを自分もしてしまうものです。もちろん私もその一人であり大企業の経営にも少なからず見受けられます。しかし、40歳近い大人が、「あの社長、アホやなぁと言われるほど、誰しもやっていないことをしなければ今の時代を生き抜くことはできない」のではと私は考えます。恥も外聞も捨てて、無謀と思われること、常識では考えられないことをやり続けなければ、結局、競争に負けてしまうと私は考えます。もちろん、それなりに緻密な計算のもとに事業は進めなければなりません。  いずれにせよ、一つの人生の生き方、経営的な観点、双方において「ちょっとアホ!」というスピリット・姿勢は一考すべきではないかと私は考えます。 参考:関連サイト 「ヒューマンフォーラム」 「ちょっとアホ日記」 「やる気伝道師日記起業家ブログ:このリンクか、下記バナーを是非ともクリック下さい。