ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

なぜ無農薬リンゴなのだろうか?

 「お知らせ:木村秋則氏のリンゴについて」でご報告しましたように、無農薬・無肥料りんご栽培農家の木村秋則氏の無農薬リンゴ栽培成功までの三十年近い苦闘の日々について、9月6日に全国紙夕刊で大きく報じられました。  夕刊が各ご家庭に到着した15時過ぎから今、現在も多くのお問合せ、メールを頂戴しております。まず、お問合せやご連絡を頂戴した皆様に厚く御礼申し上げます。また、まだ収穫されていない時期にも関わらず、木村秋則氏が栽培された無農薬リンゴ・リンゴジュースの「通販サイト」へも多数のご来訪があり、できる限り、早い段階で販売を開始したく、現在、木村秋則氏と連絡を密にしているところですが、まだはっきりと販売時期等をお知らせできる状況にはありません。  さて、我々が木村秋則氏の生産物をネット通販で開始したのは3年ほど前です。我々の事業の発端となり、私も数年間、青森に滞在し、木村氏と共に様々な苦労を重ね、今の事業は成立しています。当時も今も、木村氏はファックスやDMなどで販売をされており、御礼の意味を込めて、ネット通販を我々が担当させていただくこととなりました。しかし、何の宣伝・告知もしなかったため、初年度はそれほどご注文をいただくこともありませんでした。しかし、2年前からある程度、ご注文をいただくこととなり、昨年の秋の収穫シーズンでは多くの方々からご注文を頂戴しました。今もって何の宣伝も告知もしていません。また、我々の通販サイトはほとんど素人がつくったようなサイトで、魅力的なサイトとも言えません。  なぜ、「無農薬リンゴ」がこれほど多くの方々からご注文いただけるのか?食への不安なのか、無農薬リンゴがあまり栽培されておらず、一度、食べてみたい方が多数、おられるのか、正直申し上げて、我々にも掴みきれていません。私も少々、マーケティング手法を知っており、過去になぜこれほど「無農薬りんごやりんごジュース」をご注文いただけるのか調べたこともありました。しかし、結局、理由は明確になりませんでした。マーケティングを凌駕した何かが存在しているというのが私の中の一つの結論でした。  ただ、お客様の特徴として、一度限りのご注文をいただく方よりも、毎週、定期的にご注文いただく方々、あるいは何ケースも一度にご購入される方、お歳暮などのギフトのご利用、そして「つがる」から「ふじ」に至るまでの数ヶ月に収穫される数種類のリンゴを毎回、楽しみにご注文いただく方などがほとんどです。  秋の果物といえばリンゴ。まもなく長野県産のリンゴがスーパーなどに並び、少し遅れて青森県産のリンゴが並びます。多くの方はスーパーなどでリンゴをご購入されるはずです。  しかし、上述したように毎週、木村氏の無農薬リンゴを食される方、何ケースも一度にご購入される方は、恐らくスーパーに並んでいるリンゴは買っておられないと思います。  木村秋則氏の無農薬リンゴがおいしいのは事実です。しかし、注文しなければその味はわかりません。換言すれば、おいしいと知っているからご注文いただくのではなく、「無農薬リンゴ」だからご注文されるわけです。  なぜ、「無農薬リンゴ」なのか。冒頭に書いたように「食に対して不安を抱かれている方々が多い」ということか、無農薬リンゴがそれほど存在していないことが原因なのか。あるいは今、はやりのスローライフのスタイルの一つなのか。さらに、最近は「高額商品」というキーワードでモノが売れる時代に変化しているようですが、この点が該当するとは思えません。  ただ、昨年から急激にご注文は増えました。そして、値段に関係無く、何回もご注文いただく、といったことに何らかの答えがあるのかもしれません。もちろん、木村秋則氏のリンゴ栽培成功までの長い道のりについては、「木村秋則氏サイト」にわずかですが、ご紹介しています。ただ、このサイトもネット通販を開始したと同時期にオープンしていますので明確な理由がこのサイトにあるとも言えません。  また、少し論点からずれますが、3年前に「木村秋則」とネット検索してもほとんどヒットしませんでした。それが現在では100件以上のヒットがあります。このような時代の変化も無農薬リンゴをご注文いただく背景にあるのかもしれません。  私は過去に木村秋則氏関係の記事を何度か書きました。 「順応した環境を見つめ直す第一歩として食を考える」  また、昨年9月の台風18号が青森に直撃した際には、「台風と景気、無念、そして「生産者」と「消費者」」という記事も書きました。この時は私以上に生産者の皆様は非常な無念を味わわれたと思っています。記事を読み返しましたが、なぜ「無農薬リンゴ」なのかという答えはありませんでした。さて、もう答えを探すことはやめることにします。経営者としては明確な答えを把握し、販売拡大を目指すことが必要なのかもしれませんが、木村氏と共に数年間、苦労した「一人の人間」として、これ以上の答えを見つけることは必要無いと思っています。ただ、皆様に是非、知っていただきたいことを、過去記事から引用し、このエントリを終えたいと考えます。
台風で落ちたリンゴや浅間山噴火で灰をかぶったキャベツを流通関係の方が販売されていること、そして消費者にとっても話題になっていることも報道されています。しかし、その裏には、自然相手に土日も関係無く、一年間苦労をかけておられる「生産者」が必ずあること、そして、農業とまったく接点の無い方々に、このような現実があることを知っていただきたいと思います。
 もちろん引用した文章と違い、年間を通じて気候に左右されずに生産される農産物も多数、存在します。工場生産されている農産物もあります。ただ、「スーパーで並んでいる農産物の多くには必ず、これらを作った「人間が存在している」ということだけはご理解いただきたいと考えます。そしてその中の一人に「木村秋則」という人間もおられる」ということを。 「起業家ブログへ