ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

なぜ不買運動が起きないのか?

実名でやっており、かつブロガーではない読み手がある程度、誰だかわかっている私にとって、今回の事故は様々な理由で自分の意見を書くことができません。しかし、思うことがありますのでその点のみエントリします。

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Aというメーカーが不祥事を起こしました。

スーパーからA社の商品は無くなり、消費者もA社の商品は買わなくなりました。

Bというメーカーが不祥事を起こしました。

消費者はB社の車を売り払い、他のメーカーの車に乗り換えました。

Cという金融機関が破綻するとの噂がたちました。

消費者はC銀行から預金をすべて引き出し、他の銀行へ預金を移しました。

Dという飛行機会社が安全性に関して様々な不祥事を起こしました。

旅行者はD社ではなく、できる限り、他の飛行機会社の路線を利用し始めました。

私にとっては大きな枠で考えればこれら一連すべて「不買運動」だと思います。

牛乳も他の多くのメーカーから選ぶことができる時代、車も銀行も、そして完全とは言えませんが飛行機もそうです。

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Eという鉄道会社が大きな事故を起こしました。

世間は原因究明や、私からすれば少し向ける矛先が違うのではという報道もあります。

では、「不買運動」は起きているのか?

少なくとも私の見る限り、不買運動は起きていないと思います。私の知る限りですが。

連休中も多くの方々がEという鉄道会社を利用されていました。かくいう私も移動手段として利用しました。E社の路線を利用しなければ目的地に辿り着けません。

私は京都在住ですが、東京出張の際は新幹線です。飛行機もありますが空港までの移動時間にロスがあります。そして、まさか各地の私鉄を乗り継いで東京まで行くなんてことは誰も考えもしないし、やられる方もないでしょう。少なくとも出張では。

なぜなら、「他に選ぶことが可能な商品が無い」からです。

不買運動は起きえない」のかもしれません。

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今回の事故については、様々な角度から原因究明がなされており、今後も続くと思います。

人間は、まずミクロ的な視野から事象を捉えがちです。「身近なこと」と言い換えても良いかもしれません。ただ、今回のような大きな事故こそ、最初にマクロ的な視点から捉えるべきではないかと私は思います。

今回の事故の周囲の路線には「他に選ぶことが可能な商品」があるではないかという指摘を受けそうですが、それはミクロ的な視点ではないかと私は思います。また新幹線は属する会社が違うとの指摘もありますが、今回、私が言いたい論点からは外れます。

「他に選ぶことが可能な商品が無い」という特殊な状況。経営学的には非常な競争優位性を保持しています。しかし独占状態は諸刃の剣ともいえます。民営化になり、競争原理が働く状態になったといえるかもしれませんが、数ある事業部門の一つにでも独占、あるいは独占に近い状態が存在している状況では、完全な競争原理が働いているとはいえず、かつ危険を孕んでいます。企業体質も自ずと悪い方向へ変わってきます。

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よって、「他に選ぶことが可能な商品が無い」、そして「不買運動が起きえない」という状態を見逃してきた、あるいは自覚してこなかった日本という国家全体の過ちという非常に大きなマクロな視点で、今回の事故を「最初に」捉える必要があるのではと私は思います。

もう一度、言います。私はE社を肯定するつもりは毛頭ありませんが。

E社の体質も、もちろん問題・原因の一つかもしれません。

そして今回の事故が発生するまで、E社の体質は露呈しなかったのかもしれません。

しかし、「他に選ぶことが可能な商品が無い」、「不買運動が起きえない」という状態を

見逃してきたのか、自覚していなかったのかに関係なく、そのままの状態にしてきた

我々一人一人も考えるべき点はないのだろうか。

あるいは最初に考えるべきなのは我々なのではないか、

と私は思います。

批判することは容易です。あらぬ犯人探しも簡単かもしれません。

しかし、事故にまったく関わりの無い、一般市民である我々には何の落ち度も無かったのか?

今までも、そしてこれからも毎日のように利用し続けるサービスなのに。

「サービスだったのに」という過去形の方は別かもしれませんが。

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以上、本日のエントリはある方へのメッセージのようなもので、嫌悪感を覚える方もおられるかもしれません。異論反論ある方はコメントをお願いいたします。

ではこれにて。