ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

「カブト」は採りに行くものだったはず

2、3週間前から私の枕元付近には、ザリガニがいる水槽があり、エアーポンプの音が最初は気になったのですが、今はもうすっかり慣れました。

ザリガニが何故、いるのかについては「ゆっくりと味わう時代へ」をご覧下さい。

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さて、私が子供だった頃、ザリガニの餌といえば煮干などでしたが、すぐに水が汚れてしまうため今では粒状の専用餌が販売されています。

それはホームセンターで子供達と一緒に餌を買いに行った時のことでした。

子供達が販売コーナーの一角で、立ち止まっていました。

そこには、外国産のカブトムシが小さな虫かごのような容器に入れられ販売されていました。近年、よく見られる風景ですが、法改正で外国産のカブトムシやクワガタムシの輸入が解禁されたことが理由です。またいわゆる「カブトムシ」も今ではシーズン商品といった形で販売される時代となりました。

「お~い、家に帰るぞ。カブトムシは採りに行ったらいいでしょ。」

という私の一声で、子供達は販売コーナーから立ち去りました。

実を言うと私も子供達とカブトムシを採りに行ったことはありません。私が子供時代にカブトムシを採っていた場所も今では住宅街に変化しているからです。ただ、樹木関連の仕事をしているため、作業現場でたまにカブトムシやクワガタムシが見つかるので社員が私の子供達のために2年ほど前に持って帰ってきてくれました。その後、卵を産み幼虫から蛹まで育ったのですが、成虫には残念ながら至りませんでした。結局、我が家には一年程度、カブトムシがいたことになります。

ただこの過程で、カブトムシの飼い方図鑑など様々な本を読み、そしてカブトムシの成虫・卵・幼虫・蛹までの変化を見続け、無意識の中でいつかはカブトムシを実際に採りに行きたいという思いが彼らにはあったのだと思っています。

私も卵を発見したときは恥ずかしながら胸が躍りました。

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話を私の子供時代へ。

関東では何と呼ぶか知りませんが、カブトムシは「カブト」、クワガタムシは「ゲンジ」、カナブンは「ブンブン」などと呼んでいました。「今度、カブト、採りに行こか?」といった感じです。もちろん店で買うなんて意識は毛頭ありません。夏の遊びの恒例行事がカブト採りでした。

そして、前日に蜜のようなものを塗り付けて翌朝、採りに行ったり、この木は「カブトがいる木」といった感じでそれぞれお気に入りの場所があり、幹を足で蹴ってカブトムシのメスが落ちてきた時には、ちょっとがっかりなど、思い出は尽きません。

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恐らく私の記事を読み続けていただいている皆様には、私が言いたいことは既にご理解いただけているかもしれません。その中の一部を今回は。

現実問題として、「カブト」の居場所は少なくなりました。

私の子供時代から既に「カブト」は少なかったのでしょう。今回は、仕方が無いと私も結論付けたいと思います。

ただ、「カブト」を採るために

友達同士で知恵を出し合い、

友達同士で競い合い、

虫に刺されたり、ハチに刺されないように注意したり、

そして、苦労して採れた「カブト」は宝物のような存在。

そんな、「場・機会」が今はどこにあるのだろうかと私は思います。

ホームセンターでカブトムシは、お金を払えば瞬時にして手に入れることができる時代。

「場・機会」の半分以上は提供されていないのではないでしょうか。

ゆとり教育」について、また紆余曲折とした議論が再燃しています。

今回、私はカブトムシの販売を非難しません。外来種が生態系へどのような影響を与えるのかも言いません。

ただ、今回、私が思う「場・機会」を失くしてきた、そして提供していなかった我々、大人は反省し、何ができるのかをもっと早くに考えれば、「ゆとり教育」や「総合学習」といった言葉は存在しなかったのではないかと私は思います。

そして、私も反省すべき大人の一人です。

ただ、今から何ができるのかを考え、実行することは可能です。

虫に刺されないために、厚着をしながら汗だくで「カブト」を採りに行ったあの頃の夏を思い出しながら。