ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

企業戦略構築だけではない、自分磨きにも使える手法:SWOT分析

SWOT分析  私は、時間が少しある時やアイデアが生まれない際、あるいは新規事業を考える場合にSWOT分析を良く利用する。SWOT分析そのものはかなり以前からある分析手法だが、手法そのものがシンプルなため、「頭の体操」のような感じで気軽に使えることが特長だ。  SWOT分析は本来、企業の意思決定や戦略構築の際に利用されるものとして開発されたものだが、「一人の人間として自分の能力を最大限に発揮するためにも利用可能だ」と私は考える。  本題に入る前に、まずは我々の会社を例に挙げて、SWOT分析そのものを紹介する。ちなみに我々の会社は衰退した樹木を環境に配慮した技術によって回復させていくことを事業の主体としている。 我々の事業でみるSWOT分析  SWOT分析とは、強み (Strengths)、弱み (Weaknesses)、機会 (Opportunities)、脅威 (Threats) の頭文字から成り立つ分析手法だ。以下に、我々の既存事業をさらに拡大することに焦点を絞り、それに対するSWOTをそれぞれを簡単に挙げていく。  既存事業の「強み」は、「オンリーワン」であること。衰退した樹木の回復を専業として事業化している企業は、日本でも数少なく、日本に数台のみの最新の診断機器を保有しており、本格的な樹木診断は少なくとも本州においては、我々に発注せざるを得ない状況となっている。  「弱み」は、「マーケットがニッチ」ということ。毎日、消費される牛乳や卵といった食品と違い、我々の事業は日本人全員が欲しいと考えるサービスではない。  「機会」は何と言っても「環境意識の高まり」。我々が開発、既存事業でも活用している緑化資材は競合商品が農薬だ。数年前は価格の安い農薬が利用されてきたが、市民の環境意識の高まりによって行政も配慮せざるを得ず、我々の緑化資材が指定されるようになった。  「脅威」とは、法律の改正、為替変動など自社ではどうすることもできない外部要因で我々の事業の場合、「脅威」の一つは「天候」だ。天気だけはどうしようもなく、雨が降れば仕事ができない。そのため、売上を既存事業に大幅に依存するのではなく、緑化資材の販売やその他事業などで売上ポートフォリオを分散させている。  我々の事業以外にも簡単にSWOT分析してみよう。道路特定財源の混乱で建設業界の方々は苦労されている。まさに政治家以外には誰にもどうすることもできない「脅威」に該当する。しかし、この混乱は予め想定されていたはずだ。「公共事業への大幅依存」が「自社の弱み」に相当し、「公共事業費の大幅削減」が「脅威」に相当する。SWOT分析をしていれば自社の強みを活かした他への事業展開など対処法は多数あり、政治家に依存したところで根本的な解消にはならない。  数年前のBSE問題で苦労したのが「吉野家」だろう。これもまさに「脅威」そのものだ。他にもサブプライム問題も特定の企業にとっては今も「脅威」だろう。逆にサブプライムを「機会」として利益を得た金融機関も存在している。  さて、やっと本題に入ろう。SWOT分析を「自分磨き」に使う手法だ。 1)自分をブランド化する(強み)  自分自身の強みは何かを考えてみよう。「穏やかな人柄・協調性がある」といった性格ではなく「技能・スキル」についてだ。それなりに他人に負けない技能・スキルとは自分自身にとって何かについて自問自答しよう。小さな、あるいはニッチな分野で十分だ。  重要なことは「この案件についてはあいつに任せば何とかしてくれる」・「あいつはこの分野では最も知識がある」と第三者に確信に近いものを持たせることだ。この分野では一番と誰もが認めることは自分自身が「ブランド化」したことを意味する。そうなれば、あとは常に自分自身の技能・スキルを高める努力を続ければいい。世間に多数ある有名な商品やサービスも一度、「ブランド」と認知されれば、その後は、そのブランドの強みを壊さないよう様々な企業努力をしていることと同じだ。 2)自分の弱点を曖昧にせずしっかりと把握する(弱み)  誰しも欠点はある。その多くは性格に依存している。例えば、素晴らしいスキルを持っていても仕事が遅ければ誰も評価してくれない。その原因の多くは「仕事の先送り」・「段取りが悪い」といったもので、突き詰めれば個々の性格が遠因として大きく影響している。しかし、性格は並大抵の努力で変えることはできない。  重要なことは、「仕事が遅い原因は何か」を見極めることだ。ある人は「つい仕事を先送りしてしまう」ことが原因で、ある人は「目先の簡単な仕事ばかり片付ける」ことが原因かもしれない。いずれにせよ、大抵の人はいくつかの自分の駄目な点を曖昧ながらも理解している。そうではなく、自分固有の弱点をしっかりと認識することが最低限の出発点となる。自分の弱点を確実に理解していれば、自分の弱点を露呈しそうな場面に遭遇した場合、右往左往せず、まず心構えができる。そして、そのような場面に何度も遭遇すれば、先に述べた「自らをブランド化」しようとする努力との相乗効果によって、自然に自分なりの対処法ができていく。これらの良い循環が生まれることがさらなる強固なブランド力へと繋がっていく。 3)良い循環によって大きな運が獲得できる(機会)  私は「運」というものは、そこらじゅうに流れては飛んでいると考えている。「運」を掴み取る機会(チャンス)は無数にある。  重要なことは、「運が見えるように努力し、確実に掴み取る」ことだ。そのために最初にやるべきことは、先に述べた「他人には絶対に負けない技能・スキル」を獲得する努力だ。誰にも負けないスキルは何かをまず決める。そしてそのスキルを磨く努力を続ける。そして、そのスキルを阻害する自分の弱点を見極める。さらにその弱点を克服する対処法を体得する。これらの一連の流れを常に続け、良い循環ができあがれば、必ず、それまで見えていなかった、多数に流れている運が見えてくる。そして努力の量や努力した時間が「運の大きさ」を変えていく。努力すればする程、無数の運の中から最も大きい運を確実に獲得できる。 4)自分に関係の無い事柄などあり得ないと考える(脅威)  私は「環境・緑化」関連の仕事をしている。もちろんこれらの分野の情報収集の努力は怠っていない。しかし、政治から経済、文化など海外も含め、様々な世間の動向・トレンドについても自らが関連する分野以上に情報を収集している。  例えば先に述べたBSE問題。少なくとも私のような小さな会社には影響は皆無だ。しかし、過去に私は外食産業に大きな混乱をもたらしたBSE問題が本当に自らの会社に影響は無いかについて実際に考えたことがある。そして影響があった場合、どうリスクを回避すべきかについても考えた。  重要なことは、世間の動向や社会問題を単にニュースで騒いでいるなと考えるのではなく、自らが当事者となった場合、どう対処するかについて常に考えるということだ。「自分ではどうすることもできないこと、それが「脅威」だ。いつどのような「脅威」が自分にふりかかって来るか想定できないものと言える。だからこそ、自分に直接、関係が無いと思うことについても、常に頭の中で対処法を考えている人と何も考えていない人では、実際に何らかの「脅威」に自分が遭遇した場合、まったく結果が変わってくる。最悪の場合、「小さな脅威」だけですべてが終わってしまう可能性もある。だからこそ、世間の様々な事象について他人事と考えず、常に関心を持ち、自分ならどうするかについて考える癖をつけることは重要だと考える。  以上、SWOT分析による自分磨きというテーマで書いたが、やはり仕事人・サラリーマンを想定した内容になった感があることについてご容赦いただきたい。  繰り返しになるが、「この分野はこいつが一番」というブランド力を持つこと(強み)、ブランド力を磨き続けることで体得できる「自らが見極めた弱点を克服する力」(弱み)と「大きな運を掴むこと」(機会)、そして様々なトレンドにどう対処するか常に想定しておくこと(脅威)、といった一連の流れを日々、繰り返していれば、いつかの時点で良き循環が生じ、「誰にも負けないブランド」を自らが保有できる可能性は高いと私は考えている。 ※「ベンチャー社長ブログトップ10位をクリックで確認 ※「特選された起業家ブログ集トップ10位をクリックで確認 ※「新進気鋭アーティスト:鉄人Honey、下記画像をクリック」