米国大統領選に思う:私の留学体験から
私が米国のビジネススクールで学んでいた頃、ちょうどクリントン前大統領が選出された時だった。現在、次の米大統領選の候補者指名に向けて予備選などが実施されているが、クリントン大統領が選出されるまでの一部始終を米国で見ていた。日本では得られる情報は限られているが、米国では様々な人々の応援演説などすべてが中継され、米国の政治家の演説のうまさに感動した記憶がある。
最初のビジネススクールはワシントンD.C.にある「The George Washington University School of Business」(以下、GWU)で学んだ。米国の首都だけにホワイトハウスなど様々な公的施設が周辺にあると同時に、多くの人々が日本車(ホンダが圧倒的に多かった)を利用していた。そして日本人も多かった。
ビジネススクールではまず一年間、マーケティング・会計・経営戦略などビジネスの基礎を学ぶ。その後、二年目に自らの専門分野を見つけ、徹底的に学ぶ。しかし国際経営を学びたかった私には、GWUでは本当に学びたい分野・教授が見つからなかった。
そこで、米国中のビジネススクールを調べ、「International Business」で全米ランク1位のアリゾナ州にある「Thunderbird School of Global Management」に編入した。東海岸にあるワシントンD.C.から西海岸にあるアリゾナ州まで10日ほどかけて車で大陸横断した。
ワシントンD.C.とまったく違い、アリゾナでは、いわゆる米国車が圧倒的に多かった。もちろん留学生以外の日本人は皆無と言える状態だった。典型的なアメリカの州の一つと言えるかもしれない。そんな状態で私のアリゾナでのビジネススクール生活は始まった。
大学の寮ではなく、私は近くのコンドミニアム(日本でいうところのアパート)に住んでいた。もちろん日本人は私一人で、多くは白人だった。
私が大学から帰ると、コンドミニアムに住んでいる子供たちから小石を何度か投げられた。また、私が部屋にいる時も窓に小石が投げられる音がした。恐らく、コンドミニアムの中で唯一、肌の色も外観も違う人種が存在していることが、子供たちにとっては興味の対象になるのかなと、当初は軽く考えていた。もちろん人種差別という言葉も考えたが、日本人である私が他国人になることは無理な話であり、また、小石の一つや二つが投げられても身の危険を感じるわけでもなく、コンドミニアムの管理人に苦情を言うことも無く、生活を続けていた。
しかし、ある日、大学から帰った私にとって、到底、耐えることができない事態がついに発生していた。
部屋のドア一面すべてにケチャップとマヨネーズが塗られていた。そして大量の小石がドアの前に投げつけられていた。ドアのノブを開けようにもそこにもケチャップとマヨネーズが塗りつけられており、中に入ることもできない。
米国滞在時に初めて身の危険を感じた瞬間だった。「そこまで私は嫌われているのか、早くここから出て行けというメッセージなのか」と私は感じた。そして、コンドミニアムの管理人に現状を見てもらい、ようやく私は部屋の中に入った。
コンドミニアムの管理人は、「今後、何かあれば注意する」という一言だけを残して去っていった。私は即座に引越することを決意した。数十世帯は暮らしているコンドミニアムという空間で、私は嫌われ者だったのだ。原因が私自身の性格や態度にあるのか、それとも肌の色や外観が違うからなのか。原因は後者だろう。
私は、生まれて初めて「人種差別」というものがまだこの国に明確に存在していることを理解し体験した。
さて、現在、米国では大統領予備選の最中である。初の女性大統領、あるいは初の黒人大統領、いずれかが生まれる可能性がある。まだまだ、結果はどうなるかわからない。日本と違い、大統領選は複雑であり長期戦でもある。
ただ、今まで述べたような私の体験・考えが米国に今もまだ存在しているのか、それとも「人種」や「肌の色」などの違いを超越した「変革」を米国民は望んでいるのか、私にはわからない。そしてそれらがどれだけ選挙戦に影響しているのかもわからない。
いずれにせよ、初の黒人大統領が現実となった時、米国民は本当の意味での「変革」を望み、「変化した」と言えるのではないかと私は考える。
これからの米国大統領選に、今まで述べたような視点からも注目したい。
※「ベンチャー社長ブログトップ10位へ」
※「特選された多様な起業家ブログ集へ」
※「新進気鋭アーティスト:鉄人Honey、下記画像をクリック」