ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

少し考え方が違うのか、それとも考えそのものが無いのだろうか?

大学コンソーシアム京都

 我々の会社は毎年、インターンを受け入れさせていただいている。

 京都は数十近い大学が連携し、「大学コンソーシアム京都」という名称で財団を立ち上げ、「財団」が中心となり受け入れ側の「企業や団体」、そして送り出す側の「大学生」とのコーディネートをしている。

 そのインターンシップ10周年を記念したシンポジウムが昨日、開催され私も参加した。16時から17時半までがシンポジウム、18時から20時が懇親会というプログラムで、懇親会で名刺交換などで、何か我々の仕事に役立てばと考え参加したわけだ。

 実際に、会場であるホテルに到着したのが17時頃。そして、懇親会が別会場で始まる。開始5分前に懇親会会場に入った私。立食パーティ形式である。交流会や懇親会に何度も参加している私だが通常は開始早々に丸テーブルを囲み、参加者同士が名刺交換を始めている風景が普通だが、多くの参加者は会場周囲に置かれた椅子になぜか着席している。

 私はいつも通り、丸テーブルに進み、横にいた方に「何か、皆さん遠慮している方が多いですね」と一言。その後、偉い方が乾杯の挨拶を始められた。しかし、挨拶が長い。手に持ったビールをテーブルに置く方もちらほらと見受けられた。乾杯の挨拶は少なくとも関西では、最初の笑い一つと短めのコメントが鉄則なのだが。

 そして、やっとのことで、パーティが開始。通常は、食事など関係なく、名刺交換すべき相手を探し始めるのだが、残念ながら、周囲を見渡すと、我々には直接、関係の無い学部の大学の先生ばかりであったため、仕方なく食べ物を取りに行った。

 その後、最初に会話をした方としばし歓談。その後、その方が他の方と名刺交換をされているのを発見。我々がお世話になっている銀行の人事部長様であった。「これは挨拶をしなければ」と考えた私は、すぐに名刺交換しご挨拶を。偶然にも4、5年前に我々がお世話になっている支店におられたとのことで、これまた会話が弾んだ。

 しかし、その後、誰とも名刺交換しなかった。最初に会話した方と二人で盛り上がったのである。この方は、社会保険労務士の先生で、いろいろと教えてもらうことが多々あった。しかし、なぜかビールを良く飲まれた。

「えらい、ビール、飲まはりますなぁ(たくさん、ビールを飲まれますね)」と私。

「20時から連れと飲む約束してますねん(友人と20時から飲むんですよ)」と先生。

(だから、今もビールを多く飲むとはどういうことだろうかと、ふと考え込んだ私だった。)

 そうこうするうちに、社会保険労務士の先生(先生と呼ばないでと言われたが)は、私に一言。

「社長、おかしいと思いません、受け入れ先があってこそインターンシップは成り立つというのに、大学も事務局も誰も挨拶に来ませんやん」と先生。

「そうですなぁ、基本的に私らはある意味、お客さんですしねぇ。普通、私がその立場やったら、全員に挨拶しますわ」と私。

 先生に言われ、周りを見渡すと事務局や先生方はそれぞれ集まって歓談。内輪で楽しんでいるようにも見える。

「基本的に考え方が違うんでしょう」と私。

「そうですなぁ、大学の職員や先生はやはり考え方が違うんでしょうねぇ」と先生。

 時計を見ると既に19時半過ぎ。まもなくパーティも終了である。

「社長、壇上に立って、言ってください、これでは駄目と」と先生。

「いや、まぁ、もうよろしいでしょう」と私。

「いや、言ってください社長」と先生。

 社会保険労務士の先生に何度も言われ、人前で話すことやスピーチが好きな私は、7割くらいその気になった。しかし、結局、壇上で叫ぶことも無くパーティは終了。

 いずれにせよ、先に書いたように我々、受け入れ先企業があってこそインターンシップは成り立つ。シンポジウムでは「1000人程度の学生に対して受け入れ先企業は約400社」と報告されていた。まだまだ受け入れ先企業が不足している状態であり、既存の受け入れ先企業は大切にしなければならない(と、私がインターンシップ担当者であれば考える)。当然のことだろう。

 ただ、大学の先生方、そして大学の職員が出向されて成立している事務局の方々には、そのような考え方はあまり無いのか、根本的に無かったのか、積極的に受け入れ先企業に挨拶している方はおられないように見えた。少なくとも私と先生に誰も挨拶には来られなかったことだけは事実である。

 ちなみに、2年前は8名程の学生を私の会社は受け入れている。6年ほどインターンシップ受け入れ先企業として続けさせていただいているが2年前は大変だった。何と言っても全員、学部が違ったのだ。この事実も事務局の方も覚えておられるはずで、かつ私が今回、参加していることも把握しておられるはずだ。

 そうであれば、「あの時はありがとうございました」と一言、あっても良いのでは、と考えながら会場を後にした。もう、来年度はインターンシップ受け入れをやめようかなとも考えつつ。

 そして、今日、夕方、電話が。

「社長、コンソーシアムというところから電話です」と社員の一人。

「はい、繋いでください」と私。

「昨日はシンポジウムにご参加いただきましてありがとうございました」と事務局の方。

「いえいえ、こちらこそありがとうございました」と無難に受け応える私。

「ところで、話は変わるのですが、来年度も受け入れ先企業としてお願いできないかと思いまして」と早速、本題に入る事務局の方。

「はい、毎年のことですから、また資料を送ってください」とあっさり来年度も受け入れることを言明してしまった私。

 これでは、昨晩のちょっとした怒りはどこに行ったのだとなるが、会場で「これではおかしいではないか!」私が叫んだとしても、今日の電話の中身は少し変わったかもしれないが、受け入れをお願いされることに違いはなかっただろう。そして断ることも私はしなかっただろう。

 いずれにせよ、今から、来年度のインターンシップをどうするかを考える必要は無い。ただ、学生も変わらなければならないが、大学の先生方、職員の方も変わらなければならないと私は考える。もちろん、インターンシップを通して学生の意識を変えることは可能だ(この点だけを中心に私は学生と相対している)。

 もちろん、先生方、職員の方の意識を変えることは事実上、無理であり、何もそこまで私が行う必要性も無い。ただ「先生方、職員の方こそインターンとしてインターンシップに参加すれば、私を始めとする受け入れ先企業の本当の気持ちや状況がわかる」のではと考える。

 「社会保険労務士の先生も嘆いておられる」ようだ。先生、またどこかでお会いしましょう。一杯やりながら。

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