ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

ベンチャー企業社員のちょっとした優しさと秘められた強い意志

 数日前の朝。

 自宅近くの駐車場で、私は曇天の空を見上げながら車に乗り込んだ。

 いつもの私は、まず会社の前に車を停め、カバンやパソコン、スーツなどを会社に置き、その後、再度、車に乗って200m程離れた会社近くの駐車場へ行く。そして身軽な状態で、歩いて会社に到着する。

 現場が市内など、ある程度近い場合、私が会社の前に車を停める時間帯に現場・技術スタッフは、現場へ向けた出発準備をしている。その日も車から降りた際にスタッフが準備をしていた。

 「おはよう」と私。

 「おはようございます」とスタッフの声。

 そして、身軽になった状態で車に乗り込む際に、再度、軽トラックの横に立っているスタッフに「今日もよろしく」といった気持ちを込めて、目で合図し、私は車で駐車場に向かった。その時点で彼らは既に現場へ出発できる状態だった。

 駐車場に到着した頃、小雨が急に降ってきた。足早に会社へ向かう私。しかし雨はかなり強くなってきた。

 早足で歩きながら、会社へ向かうと、遠くからスタッフらしき一人がこちらへ向かっているように見えた。

 近づくとやはりスタッフの一人だった。そして彼は無言で私に傘を渡してくれた。

 「ありがとう」と私。

 「では、行ってきます」とスタッフ。

 彼はそう一言、告げるとすぐさま、待機している軽トラックに向かって走り出した。

 軽トラックの窓を開け、出発の合図ということで手を出すスタッフ。そして、私も軽く手を上げた。

 今から思えば、いつもの私の行動を知っている彼は、私が傘を持たずに会社へ向かっていると考えたのだろう。そして、出発時間ぎりぎりでありながら、急に降り出した雨を見て、わざわざ彼は私のために傘を持ってきてくれたのだろう。

 ちょっとしたスタッフの気配り、優しさを嬉しく思うと同時に、常日頃の現場においての周囲への気配りが、彼の今回の行動に現れたのではと思っている。

 何百年もの生命を持ち続けている貴重な樹木に常に相対しているスタッフにとっては、的確な観察眼や瞬時の判断が要求される。現場で躊躇することや、どうすれば良いか途方に暮れることなどはあり得ない世界。

 明日は、大阪のある場所での公共事業を予定している。現場・技術スタッフは、早朝5時に起床し、6時過ぎには会社を出発しなければならない。明日は一日だけだが、早朝5時起床が1週間ほど連続する現場も真夏も真冬も関係なく、一年に何度もある。

 もちろん、お客様があっての我々の仕事ではある。ただ、真夏の太陽の下で、汗だくになり泥まみれになり、毎日、頑張っているスタッフや協力していただいている業者各位が存在しなければ我々の事業は成り立たない。もちろん厳冬の現場も同じだ。

 そこには、昨今、議論されている「会社は誰のものか?」といったものを超越した違った世界が存在していると私は考える。

 会社は誰のものなのか、答えは多様にあるだろう。当社ステイクホルダー各位もご覧いただいている私のこのサイトだが、「会社は誰のものか」については、今は、評論家にでも答えは任せておけばいいと、あえて書くに留めることとする。

 ただ、「事業」というものは、お客様とお客様の期待に応えるべく、どんな状況下でも「結果を残す能力」と「結果を残そうという強い意志」を持った人間がいなければ、成り立たないと私は考える。

 これらの「能力や強い意志」を持つスタッフのレールを最短距離でいくつも築き上げることが私に与えられている役割だと考えている。もちろん、まだまだ、いや、正直なところ、ほとんど期待に応えられてはいないが。

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