ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

夢を追い続けるよりも、種を蒔き続ける方が実現は早い

 経営や人生において、「常に夢を持ち、その夢を常に思い描き、そして実現しよう」といった類の言葉があります。私はこの点について否定はしません。しかし、「できる限り、多くの種を探し、その種を自ら蒔き続ける」ことの方が、「実現の速さ」という観点だけを捉える場合、正しいのではと私は考えます。確実な実現が達成できるとも言えるでしょう。 ニワトリかタマゴか、どちらが先か?  「ニワトリが先か、タマゴが先か」という議論があります。私は、「種を蒔き続ける」という観点からは、「タマゴが先だ」と考えます。タマゴという種(シーズ)を最適な形で孵化させ、ヒヨコ(ニーズ)を生み出します。そして、ヒヨコをさらに最適な状態で成長させることで多くの良質なタマゴを生み出すニワトリ(ビジネスモデル)が育ちます。この「タマゴから始まり、ニワトリが良質なタマゴを産み続ける一連の流れ」こそが、「確実な実現への近道」だと私は考えます。 どんなタマゴを選ぶのか?  出発点となる「タマゴ」を慎重に選ぶ必要はないと私は考えます。それよりも、できる限り、様々なアンテナを活用し、多様なタマゴ、種を蒔き続けるという、「継続性」が大切です。この点だけを捉えると、何も考えず、種になりそうなものを集め、蒔き続ければ良いと思われるかもしれませんが、最初はそれで良いと私は考えます。  誰しも最初から良質な種を容易に見つけることができるわけではありません。多くの経験と、種を蒔き続け実現した成功体験を積み重ねることによって、「良質なタマゴ・種」をできる限り、短期間で見つけるコツを身に付けることができると私は考えます。よって、まずは継続して種を蒔き続けることが最も重要で、これこそが実現への近道だと私は考えます。 なぜ夢を追い続けることは駄目なのか?  夢を追い続けることを否定しません。また夢を持つことも否定しません。重要な点は、「どんな夢を持つか」にあります。ビジネスの場合、自分にとっては夢であり、多くの方々に喜んでもらえると思っていても、「その夢が実現しても誰も喜ばなかった」という危険性を孕んでいる可能性があります。 「「回転寿司の「銚子丸」、経営方針の大転換で急成長 (IPO企業の素顔):NBonline(日経ビジネス オンライン)」」で、紆余曲折の経営を続けられていた銚子丸の堀地速男社長は下記のように語られています(引用部分は一部割愛しています)。
顧客から「感謝と喜びを頂くこと」が自分の基本理念であり、新業態の多店化が思うように進まなかったのも、自分が真剣に顧客のことを考えていなかったからだと思い当たった。そして手を広げていた業態を回転寿司一本に集中させ、顧客の満足とは何かを真剣に自問した。  「例えば、それまでは握り寿司1個分のマグロのネタを20グラムで提供していたとすると、利益率を上げたいがために18グラムにするような考えで経営し、それを20年間繰り返してきました。しかしこれは全く逆。20グラムだったネタを22グラムで提供しなければ、お客様に喜んでいただくことなどできないということに初めて気がついたのです」(堀地社長)
 堀地社長は、回転寿司事業に辿りつくまでに、玩具店から始まり、ラーメン店、トンカツ店、和食店など多種多様な店舗展開をされていました。しかし、うまく事業展開ができなかったとのこと。  ここからは、私の上記記事からの推測でしかありませんが、堀地社長が当時、持たれていた夢と回転寿司事業一極化を決断された時の夢は、方向性が極めて違っていたのではと私は考えます。当初の夢は「自分だけの夢」、回転寿司事業を決断された時の夢は「お客様が最大限に喜ばれるお客様ありきの夢」だったということ。そして、この後者の顧客満足に集中した夢が実現した後、急速に事業は成功への道のりを辿っていったのでしょう。  今の自分が抱いている夢が正しいのかを自問自答することは簡単です。ただ、正しいかどうかの判断は自分が抱いている夢だけに、客観的な評価を自らが行うことは極めて困難なことです。もちろん他人に夢を語ることは必要でしょう。しかし、その夢が実現しない限り、最終的には誰も評価しません。だから、まずは「種を蒔き続ける方が、実現の近道ではないか」と私は考えるわけです。 忘れた頃に種は育っている  ある程度の経験を積むと、良質な種を常に蒔き続けるコツを掴むことが可能となり、無意識の内に、種を探し求め、種を蒔き続けているという毎日を過ごすことができると私は考えています。そして、すっかり忘れた頃に、知らぬ間に、種(シーズ)が芽(ニーズ)へと変化しているはずです。もちろん、変化していることに気付く術は必要ですが、種という粒の状態から芽という成長した状態になれば、大抵の場合、目に見え、気付くに違いありません。 芽から、ヒヨコから、ニワトリ、ビジネスモデルへ  忘れた頃に突然、出た芽を発見すると嬉しいものです。そして、大切にニワトリ(ビジネスモデル)へと成長させようと、試行錯誤するはずです。もちろん、試行錯誤の末に失敗することはあります。ただ、「芽が出た」ということも「実現の達成の一部」です。多くの種から多くの芽を出す経験を積み重ねることで、必ず、大きく成長させる術を体得できると私は考えます。よって、何度も言いますが、常に多くの種を蒔き続けることが、確実な、そして速い実現を達成させる近道なのだと私は考えます。  このように、種を蒔き続け、実現を達成した経験を多く持った後に、初めて、誰しもが納得する的確な自分の夢を見出すことができると私は考えます。  まず、「夢を追い続ける」前に、「種を蒔き続ける」。  恐らく、人生においてもビジネスにおいても、成功されている方々は、「夢しか追い続けていなかった」ように見えても、実はその前に、「種を蒔き続け、成功した経験を多く持っていた」のではないかと私は考えます。    写真は、秋に息子たちがプランターに拾ってきたドングリを無造作に埋めておいたものが知らぬ間に春に芽となって育ち始めているものです。自然も人生もビジネスもまずは種を蒔かない限り、スタート地点は生まれません。  種を探しに行きましょう。そして種を蒔き続けようと決心しましょう。あとは続けるだけで、知らぬ間に大きな芽になっているはずです。 「私も参加している起業家ブログをクリック下さい