恥ずかしい国、美しくない国、頼ることができない日本
恥ずかしい国から理解できない国となってしまった日本
我が日本のとある大臣にとって「女性は子供を産む機械」とのこと。
講演会か何かの話の中でこの発言だけがクローズアップされてしまっている感があると共に、この発言だけを捉え、国会の審議がストップさせる空白の時間がもったいないと考えている方も少なくはないだろう。しかし現実には海外でも、理解しがたい発言として既に報道され、恥をさらしている。
ご承知のようにお蔭様で私には5人の子供たちを授かることができた。もちろん、妻を子供を産む機械などと考えたことも無い。いや、そんな発想すら浮かぶはずが無い。当たり前のことだろう。
同時に私は経営者である。
私の会社にも「機械」はある。資産に計上すべきトラックや精密機械など、それなりに多種多様な「機械」を保有している。これら資産計上された「機械」は、「減価償却」という名の下に、毎年、法で定められた比率によって「機械そのものの価値が毎年、下がっていく」こととなる。数年前に100万円で購入した軽トラックも数年後には帳簿上では価値はゼロとなってしまう。走行にまったく問題が無いとしても。
もちろんこれらの設備投資による「機械」は「利益を生むための機械」であることに間違いはない。しかし、私だけでなく我々の社員も帳簿上の評価など関係なく「機械」を大切に扱う。時には綺麗に磨き上げ、時には心の中で言葉もかける。「今日も良く働いてくれたな」と。誰も大切な会社の資産を単なる機械として扱うものはいない。そして多くの企業もそのような考えで「機械」に接しているはずである。
少し視点を変えてみる。
もし、私が社員に対し「お前たちは利益を生む機械だ」と発言すればどうなるだろう。言われた社員は傷つき、すぐにやる気を失くしてしまうだろう。他の企業トップも誰しも「社員は利益を生む機械」と公言したことは無いはず。このような発言が大きな反動を生じさせる可能性が大きいこと、常識を外れた発言であることを、大抵の企業トップは認識しているだろう。
進学校の教師が子供たちに「お前たちは有名校に入学しこの学校の価値を高める機械だ」と発言することもまず無いだろう。
しかし、我が国の大臣は言ってしまった。日本人全員に対して。そして、最終的には世界へも伝わってしまった。辞任すれば良いというレベルではない。既に発言した事実をくつがえすことは不可能である。
私も米国で様々な国の学生と学んだ。そしてこのような趣旨の発言を海外の人間がどう捉えるかはある程度、理解できる。残念ながら、日本は「恥ずかしい国」どころか「理解しがたい人間がいる国」として見なされてしまったと私は考える。
そして、辞任しなければ審議に応じないという政治家の考えも理解できない。辞任すれば発言した事実が消えるなどと思っているのだろうか。
美しくない国日本
今の日本の総理大臣は日本を「美しい国」にしていきたいと盛んに言う。恐らく私も含めて、多くの日本人が何を美しくしたいのかまったく理解できていないのではないだろうか。自然の風景をさらに美しくしたいのなら、我々の事業も少しはお役に立っているのかもしれない。ただ、人の心を美しくしたいのか、町並みを美しくしたいのか、それとも何かの形を美しくしたいのか・・・
現在、政治資金管理団体の事務所費が問題視されている。政治資金の支出は5万円以上なら領収書の添付などが義務付けられているが、事務所費はこの適用外とのこと。事務所費という事務所運営の日常経費に領収書添付を義務付けすれば、処理が煩雑になる、負担になるという理由から政治資金規正法は、事務所費の領収書添付を規定しなかったとのこと。
そして、この隙間をぬって、今回の問題が露呈した。
我々中小企業だけでなく、大企業も、どんな支出にでも領収書を添付することは当たり前の作業である。領収書が必要ないとされているものは券売機などで買った交通費程度で、198円の文房具を購入しても、もちろん領収書は添付する。そうするように決まっているから仕方が無くやっているのではなく当たり前だからやっているのである。この「当たり前」がかなり過去から政治の世界では「当たり前でない」ということなのだろうか。
多くの企業経営者は「領収書添付の処理が煩雑になるから義務付けられない」という名目に納得しないだろう。「格差是正」・「再チャレンジ」など、言葉だけは伝えられているが、企業経営に直接、目に見える形で伝わるものは現在、無いと私は考える。
「美しい国」にしたいのであれば、「美しい国」にしていこうと発言する方々、「美しい国」を実現するために法をつくっていく人々が、まず美しい姿を見せることが先決ではないだろうか。
国には依存しない
最後になるが、私はまだ民事再生法という法が存在しない時代に、会社更生法によって、事実上、倒産し経営陣が総退陣に追い込まれた一族の息子である。
その後、新しい事業を自ら構築した。もちろん事業が容易に軌道に乗ることはなく、2年弱は給与をとることができる状態ではなかった。ただ、外注先や仕入先への支払いだけは必ず行った。
そんな状況下で、私は「再チャレンジ」した。もちろん何の施策の恩恵も受けず、自らと私の家族、父や弟のがんばりと取引先であるお客様や仕入先の理解だけで、何とか「再チャレンジ」は成功した。
今、どのような施策が実現されようとも、恐らく多くの中小企業は恩恵を受けないだろう。また恩恵を受けられるとも思っていないだろう。
それよりも、「政治家が給与を100%返上します」という言葉を発し、それを実現するだけでも、多くの人々に「期待感」が生じると私は考える。
国には依存しない。しかし、国を運営する人々自身が態度を変えることで、「期待感」が生じ、「美しい未来」が見えてくると感じる人は少なくないだろうと私は思う。