ベンチャー企業社長の挑戦、そして苦闘

サン・アクト株式会社というベンチャー企業の社長が語ります。

税金の無駄遣いとモラル

昨今、各行政の不正支出や各種手当の是非が問われていますが、本日は下記のような記事がありました。

共同通信ウェブサイト(日本語サイト)」(2005年6月21日付け記事より)

(個別記事のリンクは駄目なようなので、リンクポリシーに基づき下記に引用します。)

引用ここから

留学者の1割が帰国後退職 授業料など7億円“無駄”

 国の海外留学制度で1997年度から2002年度にかけて留学した中央省庁の若手キャリア官僚576人のうち、1割に当たる56人が帰国後5年たたないうちに早期退職していたことが人事院の調べで21日までに分かった。

 56人は会計検査院内閣府を含め計12省庁に所属。中には留学中に民間企業から誘いを受け、帰国後2、3カ月で転職した例も。給与以外に滞在費や授業料など1人当たり約1300万円、計約7億3000万円の国費が支給されたが、返還に応じたのは一部だけ。公務員としての仕事にほとんど生かされないまま、税金を無駄にした形だ。

引用ここまで

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この記事を見て、人事院のサイトで白書などのソースを探したのですが、いくら探しても見つからなかったため、この記事情報のみに基づき私なりの考えを述べます。

私も米国のビジネススクールに留学した人間ですが、恐らく官僚の皆様は職務に応じて経営だけでなく法律や政治関連など様々な大学院に留学されたと推察します。

さて、留学には4つほどのパターンがあります。

1)私費留学(完全に滞在費用・学費を含め自己負担での留学)

2)企業派遣(企業が費用を負担し、社員の身分で留学)

3)官僚派遣(上記記事に該当)

4)その他(ご両親の仕事の都合で海外で勉強など)

私の場合、私費留学であったわけですが、大学生相手に授業で数学を教えるなどアルバイト的なことをして僅かですが滞在費用を捻出していました。

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さて、本題です。

企業派遣・官僚派遣とも上述したように滞在費用・学費を自己負担しなくてよいわけで、私が米国滞在中も多くの同級生に企業派遣や官僚出身の方がおられました。

企業派遣の方は、法律に抵触しない範囲で、留学先卒業後、何年以内は転職しない・転職する場合は費用を返済するなどの契約を留学前に企業と締結されていました。当たり前の話です。企業側からすれば、せっかくの人材とそのコスト流出のために、契約を結ぶことはリスク回避の観点からも必ず行うはずで、派遣された社員も受け入れざるを得ない内容でしょう。

しかし、これらの契約を締結してもやはり何割かの企業派遣の方は転職されます。なぜなら転職先からもらう増加した報酬で十分に留学先の費用を元の企業に返済することができるからです。モラルという点はともかく、企業もリスクを認識したうえで派遣し、そして社員も留学の経験を他の企業で活用したいという気持ちの2点はいつの時代も変わらぬものといえるでしょう(ちなみにこれは当時の私が企業派遣の方から聞いた話で、現在、どのような状態になっているかは不明ですが、あまり変化はないと考えています)。

問題は、官僚の派遣です。

官僚・企業社員という違いだけで、上述した留学後に違う企業や他の職場に再就職するというリスクは同じです。もし、これらのリスクを省庁は認識していなかったのであれば、省庁の意識の低さに大きな問題があります。もし派遣する官僚と何らかの契約を締結していなかったのなら、リスク回避という観点からは各省庁ともレベルが低すぎます(官僚の皆様独自の内規や法律が存在していたのなら、この私の考えは間違いとなりますが)。

しかしもっと大きな問題は、モラルでしょう。我々一般人の税金で海外留学し、その後転職するとなれば、契約の有無に関わらず、留学費用は自ら返還すべきでしょう。税金で勉強させてもらったのです。「7億円の税金の無駄遣い」という認識がまったくなく、同時に税金で勉強させてもらったという気持ちもまったくないのでしょうか。

我々の税金で転職できた恩返しを今からでも遅くはありませんので何らかの形で我々に見せていただきたいものです。また、留学費用が一部のみ返還されていないのであれば、なぜ省庁はさらなる返還要求をしないのか不思議にも思います。我々、企業に対しては事業税などできる限り取れるところから取っていこうとされるというのに。

また、今回は事実のみを記事として報道されていますが、もう少し深く追求していただければなとマスコミ各位にもお願いしたいものです。

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さて、今回の記事は私のブログスタイルとはほぼかけ離れた内容ではありますが、私も海外留学した人間ということ、そしてあまりにも税金の無駄遣いが最近、多く、かつ今回、ご紹介した記事内容こそ、さらに追求すべき問題と私なりに考え、エントリとさせていただきました。

では、英気が失われないうちに業務再開します。

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追記:

今日の地元新聞夕刊にも今回、ご紹介した記事が詳細に掲載されていました。

「留学中か帰国後5年以内に退職する場合、授業料を返還するとの文書を留学前に提出する」ことを今年度から決定されたそうです。しかし法的拘束力もなく今後、見通しも立ちにくいとのことでした。