他者にも常に通用する常識を維持していく
2ヶ月ほど前に、私は「請求書への愛情」という記事をエントリしました。
お時間のある方はリンク先をご覧いただくとして、下記に過去記事を抜粋すると
ただ、会社の姿勢・風土を現すものとして、
請求書は、最も会社を代表する郵便物だと私は思います。
だから、一つ一つの請求書にわずかばかりの時間と愛情を込めて、
お客様に郵送することは、最後には当社とお客様との深い信頼関係構築につながっていくものだ
と思っています。
このようなことを伝えたかったわけです。
さて、当社のある社員が新商品のテストマーケティングをしたい旨の相談がある日、私にありました。
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「社長、新商品の容器を何種類か入手したいのですが。」
「どの業者から手に入れるか決まっているの?」
「はい、7種類ほどの小さな容器をまず一つずつサンプルの形で、この業者から手に入れようかと。」
彼は業者からの容器それぞれの見積を見せました。合計で2000円程でした。
「どういう支払方法になっているの?」
「2000円を前払いで出荷してもらいます。」
「いやね、こういう時は相手の業者さんと話をしてサンプル出荷ということで送料だけ我々が負担するように交渉しなさい。」
というやりとりの後、無事、送料負担のみの容器入手となりました。
その後、7種類の容器を手に入れた社員は、
「社長、この容器でテストしようかと思っています。」
「それで、支払方法と何個くらい必要なの?」
「まずは500個で、また前払い出荷となります。」
自分でも、初めての取引先には前払いを要求するなと思い、承認しました。
その後、500個の容器を使い、テストマーケティングを開始。まぁまぁの滑り出しのようでした。
数日後、この容器業者さんからの「納品書」がふと眼にとまりました。前払いなので請求書はありません。「納品書」には、下記のように記載されていました。( )部分は私の独り言です。
サンアクト(株)殿
(私の会社は、サン・アクトが正式名称で、我々なら「様」とするけどな、まぁこのくらいは良しとしよう。)
得意先:203000
(おぉ、203000も得意先があるのかな、いや多分、共通のコード番号なんだろうな。きれいな数字だし)
品名・入り数・運賃
(うんうん、彼が言っていた値段と個数だな。)
そして、「納品書」の最後のほうにある、容器業者さんの担当者欄を見ました。その欄には、
担当者:74 雑売り
と記載されていました。
「納品書」というものは商品を買っていただいたお客様の目に直接、触れるもの。いくら前払いで初めての取引とは言え、「雑売り」は私の常識ではあり得ません。
その後、この容器業者さん以外の業者さんを社員に探すよう命じたことは言うまでもありません。
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今、様々な企業で倫理が問われています。
また染み付いた簡単には変えられない企業体質・社風など。
飛躍的な論理かもしれませんが、お客様の手に届く「納品書」に「雑売り」と記載されていても違和感を覚えない企業は、近い将来、納期遅れなどの取引に関する重大な事故や過失を起こす危険性があると私は思い、新しい業者を探すように社員に命じました。単純に容器代が安いところがベストではないと思っています。
この業者さんはかなり昔から初めての取引先や得意先ではない相手には「雑売り」と入力するような習慣となっていたのでしょう。本当にかなり過去から。
人間の習慣や習性というものは恐ろしいものです。
「二度とこのような事故は起こしません」といった言葉を耳にします。
ただ、染み付いた、こびりついた習慣は、一朝一夕では変わることができない、そして他人に変だよと指摘され初めて、そしてやっと認識できるものではないかと思います。
かくいう我々も、常に「我々の習慣」が「我々だけに通用する習慣・常識」に変化しないよう留意していきたいと改めて考えさせられた一件でした。